相関地域研究プロジェクト

地域研究とは、個別で具体的な現場(地域)に根ざして人類社会全体が抱える現代的な課題について考える学術的な営みであり、もとより普遍性と個別性をともに内包した学問分野である。ただし、個別の地域の文脈を捉えるには現地語の習得を含めてその地域と十分に長く付き合う必要があり、良くも悪くも対象地域との密着度が高まる傾向がある。個別地域への没入が過度に強調されると、対象地域が異なる地域研究者どうしでは互いに「言葉」が通じずに協力連携が難しいということにもなりかねない。しかし、グローバル化が進み、国境を越えた交流や連帯が生まれ、その一方では国境を越えて影響を及ぼしあい、そのため国境を越えて協力して対策にあたるべき課題も増えている。

だからこそ今日では個別地域の文脈をきちんと捉えることの必要性がますます高まっているが、個別地域を見ているだけではより広い文脈が理解できず、結果としてその地域への理解も不十分なものとなりかねないため、研究対象地域の違いを超えた地域研究者どうしの連携が必要になる。

今日の世界の諸地域は、日々、その関係を深めている。21世紀の「地域」とは、変形し、連動し、影響しあう地域である。「地域」を理解するためには、比較を通じて各地域の個性をより明確に把握するとともに、「地域」と「地域」がどのように相互にかかわりあい、影響しあいながら世界の一部を構成しているか、という視点が不可欠である。「相関地域研究プロジェクト」では、「比較」と「関係性」の二つをキーワードに、世界の各地が直面している今日的な課題に対してアプローチする。

 

 

終了プロジェクト

秩序再編の地域連関(終了・村上勇介)(2016-2018)
低成長期の発展途上諸国における政治経済社会変動の地域間比較研究(終了・村上勇介)(2016)
新興国の経済政策比較—新興民主主義国とポスト社会主義国の比較から(終了・仙石学)(2017-2018)
体制転換過程の比較研究─社会運動と軍・政党(終了・末近浩太)(2017-2018)
環太平洋地域における秩序再編動態の研究(終了・中本義彦)(2017-2018)
ミクロヒストリーから照射する越境・葛藤と共生の動態に関する比較研究(終了・王柳蘭)(2017-2018)
社会主義を経たイスラーム地域のジェンダー・家族・モダニティ―中東イスラーム地域研究との架橋をめざして(終了・和崎聖日)(2017-2018) 

 

<統括班>「<地域>を測量(はか)る」21世紀の「地域」像(2010-2015)
包摂と排除から見る地域(終了・小森宏美)(2010-2011)
学校のなかの「他者」:南アジアの教育における包摂と排除(終了・押川文子)
「必要不可欠なアウトサイダー」からみる新たな地域像(終了・北村由美)
ヨーロッパにおける複合的国家の歴史的展開と現状比較(終了・小森宏美)
大衆文化のグローバル化に見る包摂と排除の諸相:マレーシア映画を事例として(終了・篠崎香織)

 

新自由主義の浸透と社会への影響に関する地域間比較研究(終了・村上勇介)(2010-2012)
中東欧・ロシアにおける新自由主義的政策の展開とその帰結(終了・仙石学)
中東地域における経済自由化と統治メカニズムの頑健性に関する比較研究(終了・浜中新吾)
ラテンアメリカにおける新自由主義の浸透と政治変動(終了・村上勇介)
市場経済移行期のラオス農村金融市場の形成:東北タイ、ベトナム、日本の経験との比較(終了・大野昭彦)
南アジアの教育における新自由主義:私事化・市場化・国際化の地域間比較に向けて(終了・押川文子)
中東地域における経済自由化政策をめぐる受容と抵抗:比較政治研究(終了・末近浩太)
中東欧・ロシアにおける新自由主義的政策の理念と実態(終了・仙石学)
新自由主義期ラテンアメリカにおける政策的位相の比較研究(終了・村上勇介)

 

自然と人の相互作用からみた歴史的地域の生成(終了・柳澤雅之)(2010-2012)
まつたけ (Tricholoma spp.)の生産と流通・食文化をめぐる相関型地域研究:アジア・北米から中東・地中海地域までを視野に入れて(終了・大石高典)
東南アジアにおける油ヤシ農園生成・拡大の政治経済学(終了・岡本正明)
相関型地域研究による総合的マツタケ(Tricholoma spp.)学の創成(終了・大石高典)
アブラヤシ農園拡大の政治経済学:東南アジアを超えて(終了・林田秀樹)
アフリカにおける人為植生の成立要因と歴史的変遷に関する地域間比較研究(終了・藤岡悠一郎)
アジアの大河流域における地域形成が流域ガバナンスに及ぼす影響(終了・山口哲由)

 

〈宗教〉からみた地域像(終了・林行夫)(2010-2012)
聖なるもののマッピング(終了・片岡樹)
功徳の観念と積徳行に関する地域間比較研究(終了・兼重努)
癒し空間の総合的研究:聖空間としての延喜式内社とアジアの聖地の比較研究(終了・鎌田東二)
異宗教・異民族間コミュニケーションにおける共生の枠組と地域の複相性に関する比較研究(終了・王柳蘭)

 

ポストグローバル化期における国家社会関係(終了・村上勇介)(2013-2015)
ポスト・グローバル化期の教育に関する国際比較:新自由主義、子どもの権利、国家の役割の再編(終了・押川文子)
地域内多様性と地域間共通性の比較政治経済分析:ポスト社会主義国を軸として(終了・仙石学)
中東とラテンアメリカにおける体制転換の比較研究(終了・村上勇介)
ユーロ危機下における南欧諸国のガヴァナンス変容:東欧諸国との地域間比較の視点から(終了・横田正顕)
ネオリベラリズム以後の新興民主主義国の多様性-ポスト社会主義国を軸として(終了・仙石学)
体制転換における軍と政党-中東とラテンアメリカの比較研究-(終了・村上勇介)
中央アジアの社会主義的近代化と現在-イスラームとジェンダーの観点から(終了・帯谷知可)

 

地域環境とグローバルな持続可能性への挑戦(終了・DE JONG,Wil)(2013-2015)
熱帯森林利用のローカル・ガバナンスの可能性に関する地域間比較研究(終了・阿部健一)
アフリカにおける地域植生と植物利用の持続可能性(終了・山本佳奈)
現代アフリカ社会における植物利用の持続可能性と地域植生の管理(終了)
熱帯森林-都市関係の社会生態学的比較研究(終了・阿部健一)

 

宗教実践の時空間と地域(終了・林行夫)(2013-2015)
移動と宗教実践:地域社会の動態に関する比較研究(終了・小島敬裕)
「功徳」をめぐる宗教実践と社会文化動態に関する比較研究:東アジア・大陸東南アジア地域を対象として(終了・長谷川清)
南欧カトリシズムの変容と福祉ビジネスの展開に関する地域間比較(終了・藤原久仁子)
宗教実践における声と文字:東南アジア地域からの展望(終了・村上忠良)
仏教をめぐる日本と東南アジア地域-断絶と連鎖の総合的研究(終了・大澤広嗣)