地域情報学の構築

地域情報学の構築

世界の諸地域の様子や動向をどのようにすれば捉えることができるのか。これは、人類が自分たちと異なる人々への関心を向けたときから取り組んできた課題であり、グローバル化が進む現代世界でますます重要性を増している課題です。この課題に対し、学術研究の分野では、統計資料や公文書、聞き取り調査や手記、新聞等のメディア情報や研究文献などを収集し、分析してきました。 こうした分析方法の重要性は今後もなくなりませんが、今日では、世界の新しい状況に対応し、従来の手法に加えて次の4 つの工夫が必要になると考えられます。

 

工夫1 国境を越えた動きを捉えて提示

今日では、国境を越えた人や物や情報の動きが容易になり、大量の動きが見られます。公文書や統計資料は国別に様式や詳しさが異なっており、そのまま繋げられないこともあるため、様式や詳しさが互いに異なる情報をどのように繋げるかという工夫が必要となります。

工夫2 図画・映像・建築物・音楽などの情報を利用

統計資料や文献資料は依然として基本的な情報ですが、社会が多様化し、情報技術の発達により様々なメディアが登場したこともあり、図画・映像・建築物・音楽のように従来は各専門分野でのみ使われてきた情報も取り入れて人々の暮らしや考え方を捉える必要があります。

工夫3 多種多様かつ大量の情報から人々の暮らしや考え方を浮かび上がらせる

情報通信とりわけインターネットの発達に伴い、大量のデータが容易に利用可能となりました。構造化されていない巨大なデータ(ビッグデータ)を短時間に処理し、対象の傾向を大掴みで読み解くことが、現在では必要とされています。

工夫4 研究対象である現地社会の人々が利用できる形でデータベースを作成・公開

研究する側とされる側が明確に区別される時代は幕を閉じ、今日では研究する側とされる側が「地続き」になっています。どのようなデータベースを構築するかは、純粋に学術的な関心の問題では済まず、データベースの設計段階から現地社会と共同で取り組むことも必要となります。
地域研は、地域情報学プロジェクトのもと、各スタッフがそれぞれの研究関心に即して具体的な資料をもとにデータベースを作成しながらこれらの課題に取り組んでいます。実験的なものを含め、2014年9月の時点で計42のデータベースやツールが作成・開発されています(非公開のものも含む)。