環太平洋地域における秩序再編動態の研究

代表

中本 義彦(静岡大学学術院人文社会科学領域・教授)

共同研究員

岡本 次郎(下関市立大学経済学部・教授)、中本 義彦(静岡大学学術院人文社会科学領域・教授)、村上 勇介(京都大学東南アジア地域研究研究所・教授)

期間

平成29年4月~平成31年3月

目的

本研究の究極的な目的は、環太平洋地域における地域秩序の現状を分析するとともに、今後の展望について考察することにある。それにむけて本件研究は、複合共同研究ユニット「秩序再編の地域連関」が提起する三つの分析の視点(地域・世界、国家、社会)のうち、地域・世界の視点から、具体的な方向性と課題、そしてそれを研究する計画を策定するとともに、幾つかのテーマについて分析を行う。
 20世紀の後半以降、経済やヒト、モノの移動をはじめとする人類による諸活動の重心は大西洋から環太平洋地域へ移っている。たが、同地域は、近代以降のヨーロッパでみられたような国家間関係の秩序化は進展せず、大国間の勢力拡大競争や対立、紛争の舞台となった。20世紀終わりの冷戦の終焉以降、アメリカ合衆国の覇権の低下や中国の台頭などによって、環太平洋地域における秩序の将来ははっきりとした見通しが立たない状況となっている。そうした状況について、国家や社会のレベルで研究、分析を進めるほかの個別共同研究ユニットの成果も取り入れながら、地域のレベルでの秩序をめぐる課題を整理し、今後の展望にむけて幾つかの課題について分析作業を進める。後者については、初年度の前半に研究会を重ねるなかで方向性を定めるが、例えば、アメリカ合衆国のトランプ新政権と環太平洋地域秩序の再編といったテーマが考えられる。

研究実績状況

以下の関連企画を準備、実施するなかで、本プロジェクトのテーマについて検討を行い、また企画は研究会を兼ねて実施した。
ラテンアメリカ政経学会第54回全国大会シンポジウム「今世紀におけるラテンアメリカ・東アジア関係」
2017年11月3日、於:京都大学稲盛財団記念館
「ラテンアメリカ・中国関係の諸課題」
江时学(上海大学)
「ペルーの東アジアとの関係─現状と展望」
カルロス・アキノ(ペルー・国立サンマルコス大学)
「日本のグローバル経済戦略とラテンアメリカ」
浜口伸明(神戸大学)

ラテンアメリカ政経学会第54回全国大会特別セッション
2017年11月3日、於:京都大学稲盛財団記念館
「マルビナス問題」 アラン・ベロ日本駐箚アルゼンチン大使

ラテンアメリカ政経学会第54回全国大会特別講演会
2017年11月4日、於:京都大学稲盛財団記念館
「トランプ政権時代の北米市自由貿易協定」
ホルヘ・ロペス(メキシコ・チアパス自治大学)

秩序再編セミナー
2017年11月27日、於:京都大学稲盛財団記念館
「グローバル秩序をめぐり対立する視点」
マイケル・スミス(ヴァージニア大学)

東アジア秩序セミナー
2017年11月28日、於:京都大学稲盛財団記念館
「将来の多極的アジア─オーストラリアと日本への含意」
マイケル・ウェズリー(国立オーストラリア大学)

また、研究代表者と共同研究員が集まって、分析視角や研究課題について集中的に検討する研究会を、2017年7月18日(京都大学稲盛財団記念館)、11月29日(京都大学稲盛財団記念館)に実施した。

研究成果の概要

 現時点では、今後の世界秩序について明確な方向性を示すことはできないが、伝統的な国際政治の分析視角である現実主義と自由主義のいずれかから構想されることがこれまでは多く見られてきた。近年は、とくに、アメリカ合衆国、中国など大国の動向やそれらの間の関係を重視する前者の視点からの立論、具体的にはパワーポリティックスを基盤とした地政学的な見方や議論が幅を利かせる傾向が強い。だが、国内のような一元的な権威の中心を依然として欠いている世界ではあるものの、経済関係や人的交流などをつうじて二国間、多国間の間に形成される相互理解に基づく了解や合意、ネットワークが、速度や程度はいまだ様々ではあるが形成されている側面も存在することを視野に入れる必要がある。つまり、現実主義か、自由主義かと選択的に問うのではなく、両者を含んだ統合的な視角から現状と今後を分析、考察することが重要である。同時に、各国や地域の社会や価値観の変動動態から生じる「下からの動態」についても重要な分析の視点として焦点を合わせることが肝要である。
 他方、東・東南アジアを中心とするアジア太平洋西部の状況については、アメリカ合衆国の「撤退」傾向が続き、中国が勢力を拡大する方向が依然として強い一方、それがどのような形で定着するかは未確定である。オーストラリアにとっては、中国が一極的に支配する状況よりは、インド、ロシア、日本などとともに、多極的な地域として安定することが望ましく、そうした点で同国は日本と将来の展望を共有しているといえる。

公表実績

Smith, Michael, “Competing Visions of the Global Order” (discussion paper として出版準備中)
Wesley, Michael, “A Multi-polar Asia: Implications for Australia and Japan” (discussion paper として出版準備中)

研究成果公表計画, 今後の展開等

 関連学会の大会や研究会において発表することを計画する。パネルや分科会を提案することを考える。成果を一般に公開するワークショップないしセミナーを実施する。
 また、出版による成果については、雑誌『地域研究』での特集の企画や専門書の刊行を検討する。

 

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