報告:アジア農村研究会「ウォーレシア世界の全体誌を求めて」

タイトル

海域世界とブトンの歴史

ユニット名

「地域の知」の創生と再生

代表者

柳澤雅之(京都大学東南アジア地域研究研究所)

開催日

2017年9月9日(土)

開催地

早稲田大学早稲田キャンパス3 号館916 号室

概要

発表者:山口裕子(北九州市立大学・准教授)
発表タイトル:海域世界とブトンの歴史

本研究会は、CIRAS複合共同研究「「地域の知」の創生と再生」と、アジア農村研究会2017年度「ウォーレシアの全体誌を求めて」との共同で開催された。「地域の知」は、史資料として残される文書だけでなく、地域の口頭伝承などによって残される。しかし、史資料に残される歴史と口頭伝承によって伝えられる歴史は往々にして異なる。本報告では、インドネシア・南東スラウェシ州のブトン島を対象に、特にブトン王国が形成された14世紀から17世紀の歴史を、ヨーロッパ人の記録から再構成すると同時に、ブトン人によって語り継がれている当時の歴史との対話を通じ、歴史の語られ方について検証した。
現在のブトン島、なかでも、バウバウ市の丘陵上にあるウォリオ城塞は、建設された由来が不明なことと、現在でも地元の人(ウォリオ人)が居住していることが大きな特徴として挙げられる。ウォリオ人が、身近にある城塞のさまざまな事物に歴史を関連付け、独自の歴史観を持っているのに対し、ヨーロッパ史資料に残されたブトン史は異なる歴史を示す。14世紀以降のブトン島は、ヨーロッパから香料諸島への中継港として、ヨーロッパの史資料に記載されてきた。香料を産するテルナテと、スラウェシの王権、オランダ東インド会社の間でブトン王国は翻弄されてきた。ウォリオ人が語る歴史とヨーロッパ資料に残された歴史のずれを通じて、多様な歴史の対話の必要性が議論された。研究会では、対話が必要という結論ではなく、さらに踏み込んで、ブトンの中継港としての有用性や現代的な意義について検討が加えられた。

 

アジア農村研究会「ウォーレシア世界の全体誌を求めて」

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