報告:写真展「エクソダス:地中海を渡る脱出」、ギャラリートーク参加会

タイトル

写真展「エクソダス:地中海を渡る脱出」、ギャラリートーク参加会

ユニット名

ミクロヒストリーから照射する越境・葛藤の共生の動態に関する比較研究

代表者

王柳蘭(同志社大学)

開催日

2018年3月7日(水)

開催地

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 1階資料展示室

概要

【日時】2018年3月7日

【概要】
 マルタ出身のフォトジャーナリストで、国際通信社ロイターの契約カメラマンとしてご活躍の、ダリン・ザミット・ルピ(Darrin Zammit Lupi)の写真展並びに、ギャラリートークに参加した。本企画は、大学関係者だけでなく一般市民にも開かれており、幅広い年齢層の30名ほどが集まった。展示された写真の背景を一つずつルピ氏が丁寧に解説くださったので、地中海難民の実態を現場の経験から知る事ができた。大変貴重で刺激的な会であった。

 下記、展示概要からの引用。
 「2002年から2015年の間、マルタ島沿岸にはアフリカからヨーロッパ大陸へ逃れようとする数千任の移民が漂着した。小さな島の独立国であるマルタは、移民がたどる地中海ルートの丁度真ん中に位置する。絶望の中にある移民は辛うじて渡航可能な祖末な小舟に乗り、イタリアにたどり着こうとする。地球上で最も危険なルートの一つであるこの地中海で数千人にのぼる人びとが溺死してきた。ルピ氏は、その間、マルタ島周辺の地中海で不法移民に起きたドラマ、悲劇、不安、そして時には喜びの涙を記録し、世界中へ発信し続けた。」

 ルピ氏の解説によれば、地中海をわたる人びとは、リビアを経由してチュニジアの港に向かう。そこから密航業者の小さなボートに乗り込み(一船に27人ほどが乗り込む)、命がけで海を渡るとのこと。毎年多くの命が落とすだけでなく、幸運にも海を渡った後にも、難民生活という試練がまっている。なぜ命をかけてまで人びとは海を渡るのか?それは、本国で経験する内戦などの不安定な情勢のほうが過酷であるため、移民となる道を選択せざるを得ないとのことだった。
 ルピ氏は、報道や世間の関心について、「人びとが関心を示さなくなったとき、そこで起こっている悲劇は誰にも知られる事がなくなる。ジャーナリストとして彼らの事を世界に伝えるために追いかける」と言及した。マルタで生まれ育ったルピ氏だからこそ、力強いジャーナリズムとして世界に訴えかけるのだと感じた。難民という国境を超えようとする人びとの実態については、地域研究でもジャーナリズムでも同様に、現場に深く入り込む事なしに真実はみえないと感じた。

紺屋あかり(お茶の水女子大学)

   

 

 

第4回「ミクロヒストリーから照射する越境・葛藤の共生の動態に関する比較研究」

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