地域情報学プロジェクト

地域研究はある特定の地域を切り取り、その中の自然・社会・文化などを分野横断的に研究する分野です。グローバル化が進展した特に90年代以降、地域研究に従事する人が増えるとともに、地域に関する情報が急速に蓄積されてきました。

一方、情報技術の革新はソフトとハードの両面で近年、目を見張るものがあります。膨大な地域研究関連資料を情報学の先端技術を用いて地域研究に取り込み、新しい地域研究を切り拓けないか。地域研究と情報学分野の境界分野で研究活動を行う有志が地域情報学という名前を掲げ、新しい地域研究の可能性に挑戦しました。地域研は、発足当初からその流れを受け、地域情報学の創出を、地域研の重要な課題の一つとしました。

地域情報学の創出のために地域研では、平成17年の設立当初から情報資源共有化システムの整備を進めてきました。また、平成22年度からは、より地域研究の課題に特化した統合型地域研究データベースの構築に着手しました。

(1) 情報資源共有化システムの整備
地域研では、国内外に蓄積されてきた文献や映像・画像、地図、統計資料等の多様な形態の地域研究情報資源を共有化し、同一のプラットフォームから横断検索を可能にする汎用的なシステムを開発しています。現在、「地域研究資源共有化データベース(Resource Sharing Database for Area Studies):試用版」として公開しているデータベースは、地域研が公開しているさまざまなカタログデータベースの統合検索を目指した、新しいタイプのデータベースシステムです。複数のデータベースを同時に検索することができる本システムでは、地域研究統合情報センターが公開しているデータベース(英国議会資料地図データベース、Qalam雑誌記事データベース、Waktu雑誌記事データベース、トルキスタン集成データベース、ポスト社会主義諸国選挙・政党データベース、マレーシア映画データベース、タミル映画データベース、タイ映画データベース)が共有化されています。
さらに平成22年度より、国立民族学博物館および総合地球環境学研究所との機関間連携の試行実験を開始しています。

(2) 統合型地域研究データベースの構築
情報学を取り込んだ新しい地域研究を目指すために地域研では、これまでに整備を進めてきた情報資源共有化システムをベースに、平成22年度から統合型地域研究データベースの構築に着手しました。データベースは本来、汎用的で、それ自体は無目的的であるのに対し、統合型地域研究データベースでは、なんらかの特定の地域研究の課題に答えるべく、必要なデータベース群と解析システムとをパッケージ化した新しいタイプのデータベースです。現在進めている統合型地域研究データベースとして、次のようなデータベースの構築を進めています。

 

終了プロジェクト

「地域の知」の創生と再生(終了・柳澤雅之)(2016-2018)
純文学と大衆文学における文学空間史とデータベースの構築(終了・工藤彰)(2018) 
日本民謡の地域情報学的分析―音の伝播と普遍性(終了・河瀬彰宏)(2017-2018) 
日本近現代文学における空間情報のデータベース構築および可視化(終了・工藤彰)(2016) 
音楽文化の伝播の解明を目的とした中国地方・九州地方における日本民謡の計量的分析(終了・河瀬彰宏)(2016) 
フィールドノートにおける場面特徴の表現手法の深化と利活用に関する研究(終了・山田太造)(2016) 

 

<統括班>地域情報学の展開(終了・原正一郎)(2013-2015)
地域情報学の展開(終了・原正一郎)(2010-2012)
沖縄におけるマラリア対策資料の医療情報学および地域情報学的分析(終了・飯島渉)
HGISの利用と動向に関する研究(終了・関野樹)
地域研究資料の連関、組織化と利用に関する研究(終了・内藤求)
東南アジア地域の古文書を対象とした汎用的データベース公開システムの検討(終了・星川圭介)
分野融合型集落定点調査情報の時空間データベースの構築と共有に関する研究(終了・渡辺一生)
地域表象情報学の試み:写真は地域の何を私たちに語りかけるのか?(終了・貴志俊彦)
HGISの展開に関する研究(終了・関野樹)

 

CIAS所蔵資料の活用(終了・柳澤雅之)(2010-2012)
近代アジアにおける植民地都市と商業・金融・情報ネットワーク:イギリス帝国を中心に(終了・脇村孝平)
トルキスタン集成のデータベース化とその現代的活用の諸相(終了・帯谷知可)
脱植民地化期の東南アジアにおけるムスリム社会の動態(終了・坪井祐司)
帝政ロシアの植民地的「知」の中の中央アジア:「トルキスタン集成」データベースの検索機能の高度化を通じて(終了・帯谷知可)
「混成アジア映画」に見る世界:一潮流としてのマレーシアを中心に(終了・篠崎香織)
島嶼部東南アジアにおける国民国家形成とマレー・ムスリムのネットワーク(終了・坪井祐司)

 

時間・空間・語彙の地域情報学(終了・原正一郎)(2013-2015)
地域に関する時空間基盤情報の収集・蓄積(終了・関野樹)
地域研究データにおけるトピックの検出と時空間変化に関する研究(終了・山田太造)
学術論文のマッピング・システムを通じた地域情報の統合と共有化(終了・山本博之)
フィールドノートを対象としたテキストマイニングに関する研究(終了・山田太造)
地域研究における時空間情報の実践的活用(終了・関野樹)

 

非文字資料の共有化と研究利用(終了・貴志俊彦)(2013-2015)
写真雑誌に見る第二次世界大戦期の記憶とジェンダー・エスニシティの表象分析(終了・杉村使乃)
20世紀前半のサハリン島に関する歴史的記憶(終了・兎内勇津流)
集合的記憶と中東欧地域の音楽:比較研究に向けてのデータベース構築(終了・福田宏)

 

CIAS所蔵資料の活用(終了・柳澤雅之)(2013-2015)
書誌情報データベースの地域情報学的新展開を探る(終了・帯谷知可)
『乾隆京城全図』と空間画像史料を用いた「華北・北京歴史データベース」の構築(終了・北本朝展)
映画に見る現代アジア社会の課題(終了・篠崎香織)
脱植民地化期の東南アジア・ムスリムの自画像と他者像(終了・坪井祐司)
1950・60年代の東南アジア・ムスリムの社会史(終了・坪井祐司)