災害対応の地域研究プロジェクト

 

災害は、平常時から切り離された特別な時間・空間ではなく、その社会が平常時に抱える潜在的な課題が極端な形であらわれている状態です。したがって、災害からの復興とは、被災前の状態に戻すことではなく、被災を契機に明らかになった社会の課題に働きかけ、よりよい社会をつくることです。そのような創造的復興を可能にするためには、災害による被害を物理的に抑え込みさえすればよいと考えるのではなく、災害が発生したときに社会が柔軟に対応するという社会の強靭性を高めることが大切です。また、被災社会が被災前にどのような状況にあり、どのような課題を抱えていたかを知る必要があります。「災害対応の地域研究」の意義はここにあります。

自然災害が起こると国境を越えて人道支援を行うことが一般的となった今日、災害対応の現場では地域の事情に根差した防災や復興が求められており、地域研究の知見はますます重要となっています。他方で、従来の地域研究は、特定地域の固有性を解明することに重きを置くあまり、その知見を地域や時代を越えて他の専門家に利用可能な形で発表することにあまり力を注いできませんでした。「災害対応の地域研究」では、災害対応の現場での防災・人道支援の実務者との連携や、近年進展が著しい情報技術の利用などにより、異業種・異分野の専門家に開かれた「地域の知」をめざします。

本センターでは、共同研究や出版などの活動やセンター教員の研究活動など、さまざまな形で災害対応の地域研究のあり方を考え、実践してきました。2011年度よりこれらの活動を統合して本センターの「災害対応の地域研究」プロジェクトとして実施しています。

このページはプロジェクトの活動内容の概要を一覧にしたものです。プロジェクトの詳細は「災害対応の地域研究」プロジェクトをご覧ください。

 

 

終了プロジェクト

災いへの社会的対応(西芳実)(2016-2018)
東南アジアの国民国家の形成過程における民族・宗教の対立(坪井祐司)(2017-2018)
災いへの対応としての非正規滞在者:東南アジアを事例として(篠崎香織)(2017-2018)
東南アジアのムスリムをめぐる社会的亀裂とその対応(終了・坪井祐司)(2016)
災害対応の実践の場としてとらえる映像作品―東南アジアを事例として(終了・篠崎香織)(2016)

 

<統括班>強くしなやかな社会をめざして(終了・西芳実)(2013-2015)
災害対応の地域研究(終了・西芳実)(2011-2013)
3・11被災後のディアスポラ・コミュニティにおけるコミュニケーションの総合的研究(終了・中島成久)

 

災害・紛争と復興(終了・西芳実)(2013-2015)
「小さな災害」アプローチによる紛争・災害に強い社会づくり:災害地域情報マッピングシステムを活用した社会問題の早期発見・早期対応(終了・西芳実)
社会紛争の総合分析に基づく解決・予防の研究:ラテンアメリカの事例から(終了・村上勇介)
ラテンアメリカにおける社会紛争-発生・終結プロセスの比較研究-(終了・村上勇介)

 

記録・記憶と社会の再生(終了・谷川竜一、山本博之)(2013-2015)
災厄からの再生のための記録と記憶の〈場〉:災害・紛争後の記憶をつなぐ実践・支援とその可能性(終了・寺田匡宏)
建築を通したポピュラー文化の記憶の場の構築力の解明(終了・山中千恵)
メディアの記憶をめぐるウチとソト―多声化社会におけるつながりと疎外の動態(終了・王柳蘭)
危機からの社会再生における情報源としての映像作品-東南アジアを事例として(終了・篠崎香織)
地域の集合的記憶の再編を支援する「メモリーハンティング」の展開と防災・ツーリズムへの活用(終了・北本朝展)