報告:第4回ミクロヒストリーから照射する越境・葛藤と共生の動態に関する比較研究研究会

タイトル

第4回「ミクロヒストリーから照射する越境・葛藤の共生の動態に関する比較研究」研究会

ユニット名

ミクロヒストリーから照射する越境・葛藤の共生の動態に関する比較研究

代表者

王柳蘭(同志社大学)

開催日

2018年3月30日(金)

開催地

同志社大学今出川キャンパス扶桑館

概要

第4回研究会では、メンバーのうち6人が参加した。まず、代表者の王を中心に、2年目の研究会の計画と、出版に向けた執筆スケジュールに関する打ち合わせを行った。ここでは、本研究会のタイトルでもあるミクロヒストリーが、単にマイノリティかつ「弱者」の集団の声を拾い上げることで、マジョリティの声に異議申し立てをするのではなく、個人、世帯、親族、芸能集団など特定の小グループが経てきた小さな「歴史」が、それを取り囲む社会経済的な状況や、大きな「歴史」とどのようにかかわりあっているかを明らかにすることを目的とするものであることを確認した。
その後、ヴェトナムの女性とアフリカからの移民・難民をめぐる2つのドキュメンタリー映画――「姓はヴェト、名はナム」(トリン・T・ミンハ製作、1989年、108分)と「海は燃えている-イタリア最南端の小さな島」(ジャンフランコ・ロージ製作、2016年、114分)
――を鑑賞、批評した。
「姓はヴェト、名はナム」では、ミンハは、女性-国家-歴史が相互かつ複雑に関連しあうヴェトナムにおいて、女性の視点をいかに表現するに挑戦した。彼女は、ヴェトナムの女性を、ひとつの物語、ひとつのアイデンティティ、ひとつのイデオロギーのなかで語ることを拒否し、真実と虚構とが揺れ動く境界のなかで、彼女たちの多声性を捉えようとした。参加者からは、トリンやインタビューイーの経験や彼女たちが置かれた政治社会的状況を、ヴェトナム国内の南北の文化的、地域的差異に関連付けて理解できるのではないかという意見が出された。
「海は燃えている」では、ロージは、アフリカや中東からの移民や難民の通過地点となっている地中海の島を舞台に、島民の日常的な暮らしと移民や難民の苦難が対称的に描いている。これに対して、参加者のなかからは、観光地として島の風景や観光に関わる人々の暮らしが描かれていないのではないか、また、移民や難民を救助している場面が多く映し出されるが。ヨーロッパ全体としては、アフリカや中東からの移民や難民の受け入れを拒否しつつある現実に十分ふれていないのではないかという意見が出された。

 

村橋勲(京都大学)

 

「ミクロヒストリーから照射する越境・葛藤の共生の動態に関する比較研究」第4回研究会

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