気候応答型居住環境データベースの構築

代表

山田 協太(筑波大学芸術系・准教授)

共同研究員

山田 協太(筑波大学芸術系・准教授)、亀田 尭宙(国立歴史民俗博物館研究部・特任助教)、柳澤 雅之(京都大学東南アジア地域研究研究所・准教授)、包 慕萍(大和大学理工学部・准教授)、甲山 治(京都大学東南アジア地域研究研究所・准教授)、宇野 朋子(武庫川女子大学建築学部・准教授)

期間

2020年4月~2021年3月(1年間)

目的

21世紀の人類の主要な課題となっている地球規模の気候変動へ、住まいはどのように対応できるか、を中心的問いとする。その1つの解として、住まい手の生活行為から生まれ、住居を含みつつそれを越える範囲に広がる、人の生活基盤となる居住環境に着目し、その気候適応を住まい手と共に促進するデザインツールとデザイン手法を構築する。第1に、住まい手と研究者の知と技法を統合し協働を促進するツールとして、各地の気候応答型居住環境を体系的かつグローバルに収集した「気候応答型居住環境データベース」を構築する。データベースは、居住環境の現在の気候への適応と、将来の気候変動への対応の2つを支援する。また、地域に形成された知と技法の共有、地域相互の学びあいを支援する。第2に、データベースで得られる知見を用いて気候応答型居住環境デザインを実際に実践し、その有効性を検証すると共に、一連のプロセスを記録し分析することで、データベースをつうじた住まい手と研究者協働の気候応答型居住環境デザイン手法を理論化する。

研究実績状況

主要な活動として掲げた2つの活動の第2番目の、「データベースで得られる知見を用いて気候応答型居住環境デザインを実際に実践し、その有効性を検証すると共に、一連のプロセスを記録し分析することで、データベースをつうじた住まい手と研究者協働の気候応答型居住環境デザイン手法を理論化する」については、新型コロナウィルスの流行により海外への渡航が困難であったことから実施できなかった。そこで、第1番目の「気候応答型居住環境データベース」構築の方法の検討と具体的作業に注力した。2020年4月から12月までの間に15回の特定テーマの小研究会を開催し、2020年12月に全体研究会をおこなった。2021年1月にも4度、特定テーマの小研究会を開催した。本年度末に第2回の全体研究会をおこなう予定である。

研究成果の概要

「気候応答型居住環境データベース」構築の方法の検討と具体的作業において、世界各地で事例が個別に研究され、蓄積されてきたヴァナキュラー建築/民族建築とそれが生む居住環境を体系的に把握するために、人類がアフリカでの誕生以来地球上を移動しながら各地に定着する人類史の中で、移動先で直面する新たな気候、生態系へ適応する発明として住居と居住環境とを捉える枠組みを設定し、先行研究を参照しながら、13の原型としてヴァナキュラー建築/民族建築を特定したことが、今年度の1つの成果である。加えて、原型の1つからの発展型として北京の四合院を事例として取り上げ、対象地の気候とバイオクリマティック・チャートとの重ねあわせから住居の気候応答戦略を推察するとともに、3次元の住居モデルを用いて建造物の生む微気候をシミュレートして推察を検証する、シミュレーションの具体的ステップを特定し、データベースのコンテンツの作成法に目途をつけることができたことが第2の成果である。本共同研究助成を得て専門家との検討会を持ち、シミュレーションの手法を確立する作業を進めている。今年度末までにシミュレーションの基本的手法を確立することができる見込みである。

公表実績

〇出版
山田協太, 「古都京都の近代化をめぐる仏教とキリスト教」, 浅川滋男編, 『能海寛と宇内一統宗教 -明治の仏教グローカリズム-』, 同成社, pp. 46-64, 2021年3月(刊行予定).
中葉史人, 山田協太, 「つくば市のスリランカ仏寺から見る首都50km 圏地域におけるグローバル化の動態 その1」, 日本建築学会2020年度大会学術講演梗概集E-1分冊, pp.39-40.
山田協太, 中葉史人, 「つくば市のスリランカ仏寺から見る首都50km 圏地域におけるグローバル化の動態 その2」, 日本建築学会2020年度大会学術講演梗概集E-1分冊, pp.41-42.

〇公開シンポジウム
山田協太, 「人類史における建築の発達から見る住居タイプ」, 科学研究費基盤研究C/CIRAS共同研究助成 気候応答型居住環境データベース研究会, オンライン, 2020年12月21日
姜広博, 山田協太, 「ヴァナキュラー建築の持つ気候応答戦略とそれが生む微気候の解明」, 科学研究費基盤研究C/CIRAS共同研究助成 気候応答型居住環境データベース研究会, オンライン, 2020年12月21日.
YAMADA Kyota, “Considering Architecture in a History of Humankind: Toward the Construction of the Global Database of Climatic Responsive Dwelt Environment”, Department of Architecture, National Cheng Kung University and Architectural Design Course/Degree Program in Design, University of Tsukuba International Exchange Seminar 2020, Online, 15 Jan. 2021.
JIANG Guang Bo, YAMADA Kyota, “Reading Vernacular Architecture as a Microclimate Generator Using Bioclimatic Chart and 3D Simulation”, Department of Architecture, National Cheng Kung University and Architectural Design Course/Degree Program in Design, University of Tsukuba International Exchange Seminar 2020, Online, 15 Jan. 2021.

〇学会分科会
山田協太, 「南インドの聖者廟ナゴール・ダルガーからインド洋世界を見る」, 文化遺産国際協力コンソーシアム第38回東南アジア・南アジア分科会, オンライン, 2020年12月17日.

研究成果公表計画, 今後の展開等

2021年度に気候応答型居住環境データベースを完成させ、オンラインで公開することを目指す。また、2021年度以降、海外渡航が可能となった時点で、コロンボ(スリランカ)の高密居住地において、データベースで得られる知見を用いた気候応答型居住環境のデザインを実践する。

 

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