CIRASセンター共同研究ワークショップ(2月17日)

CIRASセンター共同研究ワークショッププログラム 「アジア太平洋時代の地域研究とCIRASセンター」

東南アジア地域研究研究所付属CIRASセンターは、共同研究ワークショップを下記の通り開催いたします。
どなたでもご参加いただけますので、ご興味のある方は是非お越しください。多くの皆様のご来場をお待ちしております。

当日午前中は、2017年度共同利用・共同研究報告会を行っております。こちらも参加自由となっております。

ご参加希望の方はCIRASセンター事務局 ciras【at】cseas.kyoto-u.ac.jpまでご連絡ください。 【at】を@に変更してください。

日時:2018年2月17日(土) 13時30分~16時15分
場所:稲盛財団記念館 大会議室(3階・333号室)MAP

■プログラム

司会:帯谷知可(CIRASセンター)

13:30~14:00 村上 勇介(CIRASセンター)
「21世紀アジア太平洋の秩序変動と地域動態」

14:00~14:30 Warwick Murray(ウエリントン・ビクトリア大学教授、経済地理学専攻)
「地域間比較研究への視角─ラテンアメリカの経験から(仮)」

Coffee Break

14:45~15:15 酒井 啓子(千葉大学名誉教授 兼 グローバル関係融合研究センター長)
「グローバル関係学からみた地域と地域研究(仮)」

15:15~15:25 三重野 文晴(東南地域研)
コメント

15:25~16:15 総合討論

使用言語:英語(同時通訳あり)

■趣 旨
 CIRAS センター (Center for Information Resources of Area Studies) は、共同利用・共同研究拠点「地域情報資源の共有化と相関型地域研究の推進拠点」を運営するために、京都大学東南アジア地域研究研究所内に付設された研究機構である。本センターは、昨年度まで地域研究統合情報センターが掲げてきた二つのミッション、すなわち「地域研究情報資源の共有化」「相関型地域研究」を継承しながらも、地域研究のパラダイムを、グローバルとローカルをリンクさせた地域デザインを構築できる学問へと脱皮させることを目的としている。
 旧地域研究統合情報センターでは、その活動の一環として、ラテンアメリカ研究ハブの構築を進め、さらにアメリカ大陸研究ハブへと発展させた。CIRASセンターは、こうした従来の共同研究の成果を踏まえて成立しながらも、さらに21世紀のアジア太平洋地域(Asia Pacific region)の新たな秩序形成モデル構築を加速化させるために、研究対象エリアを拡大することとした。このことは、日本に欠落している同地域の総合的、学際的研究拠点を新たに京都大学に設置することをも意図している。
 アジア太平洋は、前世紀の終盤に、経済やヒト、モノの移動をはじめとする人類による諸活動の重心が大西洋から移ってきた地域で、21世紀世界の中心的な存在となっている。しかし、東アジアなどのアジア太平洋の西側は、近年、安定が著しく損なわれ、中東とならんで、いまや「世界の火薬庫」と化しつつある。アジアでは、大国中国を頂点とする垂直的な地域秩序が19世紀後半に欧米列強の介入により崩壊した後、二つの世界大戦をへて、20世紀後半に、東西冷戦の下での暫定的な均衡状態が生まれ、様々な困難を伴いつつも維持された。東西冷戦の終焉とその後の展開は、その状態を形成、維持した条件に大幅な変更を加えることになり、情勢があらためて加速的に流動化した。そうした流動化と不安定化は、アジア太平洋の西側に位置する日本にも大きな影響を及ぼしており、日本が、今後、どのような方向を選択するか、決断を迫られる日はそう遠くはない状況になっている。
20世紀後半に形成された状態や秩序が今世紀に入って激しく動揺してきたのは、東アジアなどのアジア太平洋に限られるものではない。ベルリンの壁の崩壊から30年になろうとしている今日、21世紀世界の全体について確かな見通しを持つことが困難となっているのである。世紀終わりの冷戦終結後、米国の一極支配の下で進んだグローバル化により「フラット化」するかに見えた世界は、同国のつまづきや中国をはじめとする新興諸国の台頭、市場経済による格差の拡大、社会の不安定化と紛争や衝突の増加、越境的で非民主的な政治が拡大するローカルな動きなど、様々な「グローカル化」の共振によって、「フラット化しない世界」となっている。世界と地域、国家と社会、いずれのレベルでも縦、横に亀裂が入って深まり、20世紀的な状態や秩序が融解する現象が共時的かつ共振的に起きている。しかもそれは、政治、経済、社会の位相に跨って進行している。
 本ワークショップは、以上のような状況をふまえ、アジア太平洋時代たる今世紀における地域研究のあり方とCIRASセンターの研究の方向性について考える契機とすることを目的としている。まず、村上が、アジア太平洋における秩序について20世紀までと今世紀における変動状況を報告し、地域動態の変化、とくに国家や社会のレベルの変動が世界や地域に与える影響が大きくなっている点を指摘する。続いて、ムーライが、専門とするラテンアメリカを出発点とする地域間比較研究によって政治経済や社会の変動動態を捉える視角や論点について提起を行う。最後に、現代社会の諸問題を読み解くために、主体内部の完成性や、狭い範囲の共同体からグローバルなネットワークまでの様々なレベル、規模の主体の関係性の変化と相互関連性を分析する重要性を説く酒井が、その視角を出発点として構築を進めてきている「グローバル関係学」の進展と成果から浮かび上がる21世紀の地域の姿や地域研究のあり方を提起する。

■本ワークショップは、文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型) 平成28年度~32年度「グローバル秩序の溶解と新しい危機を超えて:関係性中心の融合型人文社会科学の確立」(研究代表者・酒井啓子)との共催で行われます。

あわせて読みたい